Case Study
導入事例
経営情報をリアルタイムに把握する
Webアプリとしての特性を活かし、利用者に評判のよいシステムの構築を達成
問題点と課題
経営状況のリアルタイムな把握は会社経営にとって重要な意味を持つ。簡単に、経営陣が望む形で経営状況を把握することができるならば、それは非常に重要なシステムとなる。
前田建設工業では、このような経営状況をExcel等のアプリケーションを使い提供していたが、即時性に欠点があったので新たなシステムの構築が必要となった。
今回、新たに構築することとなった「経営支援システム」は、非常に大規模なシステムであり、ツールを使って効率的に作成すること、利用者の細かな要望を満たすこと、出力が遅い画面でも、3秒以内で出力することなどが目標とされた。そのため、プロ(SI)の力を借り、本システムの構築に取り組むこととなった。
経営支援システムでは、入力系の画面と出力系の画面が必要であるとの要件定義されており、出力系では、OLAPツールを採用する計画を立てていた。また、入力系では、VBにてクライアントサーバー環境で作成する計画を立てていた。
しかしながら、Webブラウザにより入力したいという利用者からの要望があり、Webブラウザからデータを入力できるソフトウェアを検討する必要があった。
前田建設工業の北村氏は、Excelを使ってWebアプリをつくることができるツール「XCute」を以前より広告等で概要程度は知っており、このソフトウェアが使えないか検討することとした。
XCuteの機能検討には、NECソフトの大沢氏があたった。XCuteを評価していくと、ExcelシートでWebアプリケーションを作成でき、他の言語を使用するのと遜色のないレスポンスと感じたそうだ。大沢氏がこの結果を北村氏に報告し、詳細検討をした結果、本システムの入力系のツールとしてXcuteを採用することとなった。
当初出力系として予定していた、OLAPツールでは、同社が求めていた統計の要件を満たすことができなかった。入力系でXCuteを選択していたこともあり、このツールが出力系にも使えるのではないかと、さらに検証を進めることとなった。
NECソフトにおいて、XCuteを出力系につかえるか検証する為の、デモアプリケーションを作成したところ、前田建設工業が求める要件を満たすことができた。これにより、北村氏は、XCuteで出力系、入力系ともにできることを確信し、XCuteによって開発を進めることを決断した。
前田建設工業 北村氏
システムを構築してみて、一番難しいことは意思の伝達でした。
前田建設の中しか知らない私達が、当たり前と思っていることが、開発をお願いしているNECソフトの皆さんに伝わらないのです。一生懸命聞いていただき、分析していただいて資料を作ってもらうのですが少し違うのです。世間の常識と企業内の常識が違うことを痛感しました。
Xcuteを導入する前には、世間の方が使われているBIツールを検討していました。しかし、私達の要望とBIツールの表現にずれがありました。格好はいいし、きれいな表現があるのですが、「我々は使わないだろうな」と思ってやめました。
Xcuteはスマートではないといえば宮森社長に怒られますが、非常にドン臭いソフトだというのが第一印象でした。OracleのデータをExcelに取り出しWebで表示し、Webで入力したものをExcelで計算してOracleに書き込むだけのシンプルなソフトという印象でした。
NECソフトの大沢さんに要件は伝えてあったのでプロトタイプを作ってもらい、自分でも入力系の画面を作ってみてCS-CONCEPTやLotusNotesの基礎知識とAccessで使ったSQLの知識により割りと複雑なものまで作ることが出来ることがわかりました。
今回のシステムでは、XcuteとJavaScriptで基本部品をNECソフトの竹島さんに作ってもらったため全体的な統一性をとることができ、非常に感謝しています。
狭い範囲のシステムでは、簡単に作れるツールですが、今回のように大きな範囲で作る場合には、トータルプランを構築して、専門ベンダーの力が必要だと思っています。
解決方法
こうして経営支援システムの開発がスタートした。北村氏がExcelシートに画面を設計し、それをもとにNECソフトの竹島氏がシステムを組み立てていくという手順で開発がすすめられることとなった。これにより、発注仕様書と、実際の稼働イメージ画面を兼ねることができ、前田建設工業の求めているイメージにより近いシステムが構築できる。
「XCuteはExcelに画面生成したものをWebに表示するという単純な仕組みの為、足りない物をどのようにして実現するかに苦労した。 しかしながら、タグ差し込みやテンプレート機能を多様し、JavaScript等も組み合わせることができる仕様であったため、お客様の要望を満たす高度なWebアプリケーションを構築することができた。」とNECソフト竹島氏は語る。
◇実働システム画面
経営支援システム
必要な情報をクイックに絞り込み、きれいなグラフ画面などを表示できる。
プロトタイプの構築は、わずか1ヶ月程度で完了してしまった。
「Excelシートで出した画面イメージがそのままXCuteに転用できたことが開発効率におおきな影響を与えた。自分の考えていたシステムイメージを実現することが出来た。」と前田建設工業の北村氏は語る。
なお、開発の前提条件としてあった、出力が遅い画面でも、3秒以内で出力する目的も達成できた。これはデータベース構造を検討し、画面数を減らす努力により達成することができたそうだ。画面パターンは、10000種類以上になるであろうとのことだ。
こうして、モックアップの稼働が開始されたわけであるが、デスクトップヒープの問題(OS側リソースの問題)が多発し、安定稼働するまでの大きな問題となった。当初、サーバOSに、Windows2000 Serverを採用していたが、これをWindows2003 Serverに変更し、デスクトップヒープの拡張を行うことにより問題を解決できた。
「導入していく中で、OSリソースの問題やOfficeのサービスパックのバージョンによる問題などが幾つか発生しましたが、マイクロラボのサポートの方には敏速に対応して頂き対処することができたので助かりました」とNECソフトの竹島氏は語る。
Webでのグラフ描画、簡易な入力画面の作成等のメリットもありますが、SELECT/INSERT/UPDATEに複雑なSQL文を書けない等のデメリットがあることも事実です。これらの特性を十分に把握し、適用する必要があります。また、処理内容が「セル」に書かれるため、一見して「どこで何をどうしているのか」が分からないこともあり、事前に標準化を行うことが必須です。
NECソフト 大沢氏
NECソフト 竹島氏
標準的な使い方では、画面構成や操作体系が似かよったものになりがちですが、タグ差込みやHTMLテンプレート機能により、JavaScriptなどの標準的なWeb技術と組み合わせて使えるため、開発者の力量次第でより使い易いアプリケーションを開発することが可能です。但し、その場合はXCute特有のクセを理解し、対処するだけの能力が求められます。
今回の開発では、CHG_SQLの使いこなしが1つのキーポイントとなりました。
システム化の成果とこれから
開発効率の高さは前述通りであるが、利用者の評判も上々だ。
前田建設工業においては、経営者のITスキルが非常に高く、Excelは文化として根付いている。
経営支援システムには、現状の情報をExcelシートとしてダウンロードする機能がついており、この機能が大変好評だそうだ。これは、Excelシートには計算式も入っているし、データとして再利用可能となる点。自分で好きな角度からデータを再分析する際、Excelシートであれば、非常に都合がよい。
また、経営支援システムはあらゆる角度からデータを分析できるようにインターフェイスに工夫が なされており、目的の情報まで簡単にたどり着き、さらにその情報を分析することも直感的にできる。これは北村氏の業務を知り尽くしたシステム設計によるものであろう。
また、これらのシステム要望を忠実に再現することができるNECソフトの実力も特筆すべき点である。
アプリケーションツール主導ではなく、業務を優先した設計であったため、経営陣になくてはならないシステムが完成した。
プロ(SI)の手を効率よく利用し、北村氏本人は、機能仕様、画面仕様等の設計に注力したことが、本システムの成功につながっているのではないだろうか。
本事例は、システム担当者が持っているアイデアを見事に実現し、利用者に喜ばれるシステムを構築した興味深い事例ではないだろうか。